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そせい

蘇生

豊島 与志雄

「新小説」1918(大正7)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,974 字 · 31 页

青空文庫

然しその時は殆んど見当がつかなかった。慶子さんの方はもう到底駄目だった。それでも二人共手当はした。夜明けになって君は眼を開いた、何かしきりに云っていたが、言葉は聞き取れなかった。神経が麻痺していたのだ。それから昏睡状態が続いた。ジガーレンを二度注射した。夕方君はまた眼を開いた。然し医者は今覚してはいけないといった。脳を気遣ったのだ。モヒを注射した。そして先刻から君は本当に覚めたのだ。」

敬助は黙ってその言葉を聞いていた。

「……慶子さんの方は助からなかった。僕は変事を知らしてやった。親父さんと兄さんとがやって来てくれた。せめて君の方だけでも助けてくれと兄さんが云った。僕は泣いた。皆泣いた。……慶子さんの死体はその午後家に運ばれた。」

敬助はいつかそういうことは夢にみたような心地がした。そして黙っていた。

「君は生きなくちゃいけない!」と中西は云った。「僕と慶子さんの兄さんとで手を廻して、世間には発表しないようにしてある。知ってるのは僕達と、山根の家の人と、八重子さんとだけだ。周囲の者は、君に勇気を要求している。この事件に面してまた立ち上るだけの勇気を要求している。