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きょこうのはる
虚構の春
「文学界」1936(昭和11)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,586 字 · 108 页
でも、まあ、大みそか、お正月、百円くらい損してもいいから、一日もはやく現なま掴みたい心理、これは、私たちマゲモノ作家も、君たち、純文学者も変りない様子。よい初春が来るよう。萱野鉄平。」
月日。
「先日、(二十三日)お母上様のお言いつけにより、お正月用の餅と塩引、一包、キウリ一樽お送り申しあげましたところ、御手紙に依れば、キウリ不着の趣き御手数ながら御地停車場を御調べ申し御返事願上候、以上は奥様へ御申伝え下されたく、以下、二三言、私、明けて二十八年間、十六歳の秋より四十四歳の現在まで、津島家出入りの貧しき商人、全く無学の者に候が、御無礼せんえつ、わきまえつつの苦言、今は延々すべきときに非ずと心得られ候まま、汗顔平伏、お耳につらきこと開陳、暫時、おゆるし被下度候。噂に依れば、このごろ又々、借銭の悪癖萌え出で、一面識なき名士などにまで、借銭の御申込、しかも犬の如き哀訴嘆願、おまけに断絶を食い、てんとして恥じず、借銭どこが悪い、お約束の如くに他日返却すれば、向うさまへも、ごめいわくなし、こちらも一命たすかる思い、どこがわるい、と先日も、それがために奥様へ火鉢投じて、ガラス戸二枚破損の由、話、半分としても暗涙とどむる術ございませぬ。