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きょこうのはる
虚構の春
「文学界」1936(昭和11)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,586 字 · 108 页
貴族院議員、勲二等の御家柄、貴方がた文学者にとっては何も誇るべき筋みちのものに無之、古くさきものに相違なしと存じられ候が、お父上おなくなりのちの天地一人のお母上様を思い、私めに顔たてさせ然るべしと存じ候。『われひとりを悪者として勘当除籍、家郷追放の現在、いよいよわれのみをあしざまにののしり、それがために四方八方うまく治まり居る様子、』などのお言葉、おうらめしく存じあげ候。今しばし、お名あがり家ととのうたるのちは、御兄上様御姉上様、何条もってあしざまに申しましょうや。必ずその様の曲解、御無用に被存候。先日も、山木田様へお嫁ぎの菊子姉上様より、しんからのおなげき承り、私、芝居のようなれども、政岡の大役お引き受け申し、きらいのお方なれば、たとえ御主人筋にても、かほどの世話はごめんにて、私のみに非ず、菊子姉上様も、貴方のお世話のため、御嫁先の立場も困ることあるべしと存じられ候も、むりしての御奉仕ゆえ、本日かぎりよそからの借銭は必ず必ず思いとどまるよう、万やむを得ぬ場合は、当方へ御申越願度く、でき得る限りの御辛抱ねがいたく、このこと兄上様へ知れると小生の一大事につき、今回の所は小生一時御立替御用立申上候間、此の点お含み置かれるよう願上候。