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きょこうのはる
虚構の春
「文学界」1936(昭和11)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,586 字 · 108 页
私には成算ございましたので、二、三日、様子を見て、それから貴方へ御寄稿のお礼かたがた、このたびの事件のてんまつ大略申し述べようと思って居りましたところ、かれら意外にも、けさ、編輯主任たる私には一言の挨拶もなく、書留郵便にて、玉稿御返送敢行いたせし由、承知いたし、いまは、私と彼等二人の正義づらとの、面目問題でございます。かならず、厳罰に附し、おわびの万分の一、当方の誠意かっていただきたく、飛行郵便にて、玉稿の書留より一足さきに、額の滝、油汗ふきふき、平身低頭のおわび、以上の如くでございます。なお、寸志おしるしだけにても、御送り申そうかと考えましたが、これ又、かえって失礼に当りはせぬか、心にかかり、いまは、訥吃、蹌踉、七重の膝を八重に折り曲げての平あやまり、他日、つぐない、内心、固く期して居ります。俗への憤怒。貴方への申しわけなさ。文字さえ乱れて、細くまた太く、ひょろひょろ小粒が駈けまわり、突如、牛ほどの岩石の落下、この悪筆、乱筆には、われながら驚き呆れて居ります。創刊第一号から、こんな手違いを起し、不吉きわまりなく、それを思うと泣きたくなります。このごろ、みんな、一オクタアヴくらい調子が変化して居るのにお気附きございませぬか。