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きょこうのはる
虚構の春
「文学界」1936(昭和11)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,586 字 · 108 页
いや、この前、北川冬彦氏から五六行の葉書を貰った時だけです。然し、ほんとうは、生れてはじめて、こんな長い手紙かいた。もう、ねましょう。シェストフでも読みましょう。どうか/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\どうか、どうか、御手紙下さい。でないと、ぼくはつまんないんです。この甘ったれ根性め。ぼくはこの手紙をかいたぼくを余り好きません。あなたはどうですか? 僕の少年時の貧しき自慢に、これをつけ加えて下さい。ぼくは少年時十三四頃、絵が大変、下手でしたが、帝展の深沢省三氏(紅子氏の夫)が好いてくれまして、美術に入れとすすめたりしました。歌がうまかった、詩も得意だ――それこそバカメですね。こう言うのが、――カジョーはきらいなんです。ぼくも人の自慢は、きらいですが、自分のはまア書きました。御免なさい。不愉快にならないで下さい――いや、第一そんな、不愉快になるなんてわけがわからぬ。私は下劣の少年である。けれども、――否! やっぱり下劣である。むりのオネガイ。手紙くれやがれと。サラバ、サラバ、鶴首。待て! あくびをした奴がある。しかも見よ。あ、あ、あ、と傍若無人、細長き両の腕を天井やぶれよ、とばかりに突き出して、しかもその口の大きさ、歯の白さ、さながら、馬の顔であった。