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じゃせいのいん
蛇性の婬
田中 貢太郎
雷峰怪蹟
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,880 字 · 54 页
すると内から白娘子の声がした。
「そう、では、こちらへね、さあ、あなた、どうかお入りくださいまし」
白娘子の詞について小婢が云った。
「さあ、どうかお入りくださいまし」
許宣は入りにくいので躊躇していた。と、小婢がまた促した。
「奥様もあんなにおっしゃってますから、どうぞ」
許宣はそこで心を定めて入った。室の両側は四扇の隔子になって一方の狭い入口には青い布の簾がさがっていた。小婢は白娘子に知らすためであろう、その簾を片手に掲げて次の室へ往った。許宣はそこに立って室の容を見た。中央の卓の上に置いた虎鬚菖蒲の鉢が、先ず女の室らしい感じを与えた。そして、両側の柱には四幅の絵を掛けて、その中間になった所にも何かの神の像を画いた物を掛けてあった。神像の下には香几があって、それには古銅の香炉と花瓶を乗せてあった。
白娘子が濃艶な顔をして出て来た。許宣はなんだかもう路傍の人ではないような気がしていたが、その一方では非常にきまりがわるかった。
「よくいらっしゃいました、昨日はまたいろいろ御厄介になりまして有難うございました」
「いや、どういたしまして、今日はちょっとそこまでまいりましたから、お住居はどのあたりだろうと思って、何人かに訊いてみようと思ってるところへ、ちょうど婢さんが見えましたから、ちょっとお伺いいたしました」