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じゃせいのいん
蛇性の婬
田中 貢太郎
雷峰怪蹟
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,880 字 · 54 页
一軒の楼屋があってその時窓を開けたが、その拍子に何か物が落ちて来て、それが許宣の頭に当った。許宣はむっとしたので叱りつけた。
「この痴者、気を注けろ」
楼屋の窓には女の顔があった。女は眼を落してじっと許宣の顔を見たが、何か云って引込んだ。許宣は不思議に思ってその窓の方を見ていると、もうその女が門口からあたふたと出て来た。それは白娘子であった。
「この妖婦、また来て俺を苦しめようとするのか、今度はもう承知しない、つかまえて引きわたすからそう思え」
白娘子は眼で笑っていた。
「まあそんなにおっしゃらないで、私の云うことを聞いてくださいよ、二度もあなたをまきぞえにしてすみませんが、あの衣服と扇子は、私の前の夫の持っていたものですよ、決して怪しいものじゃありません、だから疑いが晴れたじゃありませんか」
「それじゃ、俺が王主人の所へ帰った時に、何故いなかったのだ」
「それは、あなたの帰りが遅いものですから、婢と二人で、あなたを探しに往ったところで、あの騒ぎでしょう、私は恐ろしくなったから、船で婢の母の兄弟のいる、この家へ来ていたのです」
許宣の白娘子に対する怒は解けた。