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じゃせいのいん 

蛇性の婬 

田中 貢太郎

雷峰怪蹟

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,880 字 · 54 页

青空文庫

そして、寺に帰った和尚は、本堂の前を深く掘らせて、彼の鉄鉢を埋めさし、永劫が間世に出ることを戒めたのであった。

この『蛇性の婬』の話は、上田秋成の『雨月物語』の中でも最も傑出したものとせられているが、しかし、これは秋成の創作でなしに支那の伝説の翻案である。支那の杭州にある西湖の伝説を集めた『西湖佳話』の中にある『雷峰怪蹟』がその原話である。雷峰とは西湖の湖畔にある塔の名で、呉越王妃黄氏の建立したものであるが、『雷峰怪蹟』では奇怪な因縁から出来たものとせられている。著者も嘗て西湖に遊んで南岸の湖縁に聳え立った五層の高い大きな塔の姿に驚かされた一人である。その西湖には南岸の雷峰塔に対して北岸に保叔塔と云うのがある。

雷峰怪蹟

宋の高宗帝が金の兵に追われて、揚子江を渡って杭州に行幸した際のことであった。杭州城内過軍橋の黒珠巷と云う所に許宣という壮い男があったが、それは小さい時に両親を歿くして、姐の縁づいている李仁と云う官吏の許に世話になっていた。この李仁は南廊閣子庫の幕事であった。許宣はその李幕事の家にいて、日間は官巷で薬舗をやっている李幕事の弟の李将仕と云う人の家へ往って、そこの主管をしていた。