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みかん

蜜柑

佐左木 俊郎

「随筆」1927(昭和2)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,618 字 · 14 页

青空文庫

瞼がひくひくと微動していた。

「美代姉は、厭んだって言ったの、父、行がねえごったら、首さ、縄つけでも連せで行ぐどて。お美代姉、泣いでいだけ。」

お婆さんは眼を閉じたまま、なんにも答えなかった。そして、しばらくしてから、独り言に呟いた。

「あのがきも、生きでるうぢは、楽など出来めえ、牛馬のように……」

言葉は、涙に遮られて、低く語尾を引いた。

こうは言ったが、お婆さんは、お美代の身の上を哀れに思うよりも、お美代を失った自分の身の、死期までの寂しさ、すべての不自由を思わずにはいられなかった。

――昭和二年(一九二七年)『随筆』二月号――