轻松读懂日语经典作品
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みかん
蜜柑
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社 、1941(昭和16)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,307 字 · 25 页
「あの荒海に船を出すことが危険でないとはよも思われまい。その危険を承知でじぶんの父親に渡海をすすめることが出来るかどうかうかがいたいのだ」
「あれくらいな風が」と七郎左衛門は言葉を避けた。
「いのちにかかわる危険なものだとは、それがしは思わん」
「危険だと思うか思わぬかは水掛け論、げんに御渡海が中止になった事実だけでたくさんだ。拙者のうかがいたいのはそんなことではない、たとえ些かなりとも危い海へじぶんの父親に渡れとすすめられるかどうかというのだ」
「左様なことを、いまあらためて答える必要はない」
「……そうであろう」
七郎左衛門の冷やかに見くだした態度を、源四郎はするどくねめつけながら云った。
「答えられないのがあたりまえ、それがなによりの返答だ。だが藪どの、……貴殿のご一家が高禄でお召抱えになったからとて、それはとくべつに我儘無法をゆるされたわけではないぞ」
「なにを云う、それはどういう意味だ」
「拙者の申すことを聞かれい、紀伊家譜代の者は、三河いらい徳川家につかえておる。父祖の代から御馬前に骨をさらし、身命をつくして御奉公をして来た。それらの者でも高禄を戴いているのは僅かなかずで、多くはいまだに微禄小身のまま懸命の御奉公をしておる。