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かにこうせん

蟹工船

小林 多喜二

「戦旗」1929(昭和4)年5月、6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,890 字 · 125 页

青空文庫

二度、ワアーッと叫んだ。

「まず糞壺さ引きあげるべ。そうするべ。――非道え奴だ。ちゃんと大暴風になること分っていて、それで船を出させるんだからな。――人殺しだべ!」

「あったら奴に殺されて、たまるけア!」

「今度こそ、覚えてれ!」

殆んど一人も残さないで、糞壺へ引きあげてきた。中には「仕方なしに」随いて来たものもいるにはいた。

――皆のドカドカッと入り込んできたのに、薄暗いところに寝ていた病人が、吃驚して板のような上半身を起した。ワケを話してやると、見る見る眼に涙をにじませて何度も、何度も頭を振ってうなずいた。

吃りの漁夫と学生が、機関室の縄梯子のようなタラップを下りて行った。急いでいたし、慣れていないので、何度も足をすべらして、危く、手で吊下った。中はボイラーの熱でムンとして、それに暗かった。彼等はすぐ身体中汗まみれになった。汽罐の上のストーヴのロストルのような上を渡って、またタラップを下った。下で何か声高にしゃべっているのが、ガン、ガ――ンと反響していた。――地下何百尺という地獄のような竪坑を初めて下りて行くような無気味さを感じた。

「これもつれえ仕事だな」