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かにこうせん

蟹工船

小林 多喜二

「戦旗」1929(昭和4)年5月、6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,890 字 · 125 页

青空文庫

「んよ、それに又、か、甲板さ引っぱり出されて、か、蟹たたきでも、さ、されたら、たまったもんでねえさ」

「大丈夫、火夫も俺達の方だ!」

「ん、大丈――夫!」

ボイラーの腹を、タラップでおりていた。

「熱い、熱い、たまんねえな。人間の燻製が出来そうだ」

「冗談じゃねえど。今火たいていねえ時で、こんだんだど。燃いてる時なんて!」

「んか、な。んだべな」

「印度の海渡る時ア、三十分交代で、それでヘナヘナになるてんだとよ。ウッカリ文句をぬかした一機が、シャベルで滅多やたらにたたきのめされて、あげくの果て、ボイラーに燃かれてしまうことがあるんだとよ。――そうでもしたくなるべよ!」

「んな……」

汽罐の前では、石炭カスが引き出されて、それに水でもかけたらしく、濛々と灰が立ちのぼっていた。その側で、半分裸の火夫達が、煙草をくわえながら、膝を抱えて話していた。薄暗い中で、それはゴリラがうずくまっているのと、そっくりに見えた。石炭庫の口が半開きになって、ひんやりした真暗な内を、無気味に覗かせていた。

「おい」吃りが声をかけた。

「誰だ?」上を見上げた。――それが「誰だ――誰だ、――誰だ」