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かにこうせん

蟹工船

小林 多喜二

「戦旗」1929(昭和4)年5月、6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,890 字 · 125 页

青空文庫

ロシア人が奇声をあげて、ダンスの時のような足ぶみをした。

「日本、働く人、やる。(立ち上って、刃向う恰好)うれしい。ロシア、みんな嬉しい。バンザイ。――貴方方、船へかえる。貴方方の船、働かない人、これ。(偉張る)貴方方、プロレタリア、これ、やる!(拳闘のような真似――それからお手々つないでをやり、又突ッかかって行く恰好)――大丈夫、勝つ! ――分る?」

「分る!」知らないうちに興奮していた若い漁夫が、いきなり支那人の手を握った。「やるよ、キットやるよ!」

船頭は、これが「赤化」だと思っていた。馬鹿に恐ろしいことをやらせるものだ。これで――この手で、露西亜が日本をマンマと騙すんだ、と思った。

ロシア人達は終ると、何か叫声をあげて、彼等の手を力一杯握った。抱きついて、硬い毛の頬をすりつけたりした。面喰った日本人は、首を後に硬直さして、どうしていいか分らなかった。……。

皆は、「糞壺」の入口に時々眼をやり、その話をもっともっとうながした。彼等は、それから見てきたロシア人のことを色々話した。そのどれもが、吸取紙に吸われるように、皆の心に入りこんだ。

「おい、もう止せよ」