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かにこうせん

蟹工船

小林 多喜二

「戦旗」1929(昭和4)年5月、6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,890 字 · 125 页

青空文庫

八

「いいか――?」

「よオ――し……」

発動機がバタバタ動き出した。船尾で水が掻き廻されて、アブクが立った。

「じゃ……」

「じゃ」

「左様なら」

「淋しいけどな――我慢してな」低い声で云っている。

「じゃ、頼んだど!」

本船から、発動機に乗ったものに頼んだ。

「ん、ん、分った」

発動機は沖の方へ離れて行った。

「じゃ、な!……」

「行ってしまった。」

「麻袋の中で、行くのはイヤだ、イヤだってしてるようでな……眼に見えるようだ」

――漁夫が漁から帰ってきた。そして監督の「勝手な」処置をきいた。それを聞くと、怒る前に、自分が――屍体になった自分の身体が、底の暗いカムサツカの海に、そういうように蹴落されでもしたように、ゾッとした。皆はものも云えず、そのままゾロゾロタラップを下りて行った。「分った、分った」口の中でブツブツ云いながら、塩ぬれのドッたりした袢天を脱いだ。

八

表には何も出さない。気付かれないように手をゆるめて行く。監督がどんなに思いッ切り怒鳴り散らしても、タタキつけて歩いても、口答えもせず「おとなしく」している。それを一日置きに繰りかえす。(初めは、おっかなびっくり、おっかなびっくりでしていたが)――そういうようにして、「サボ」