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はえ
蠅
海野 十三
「ぷろふいる」1934(昭和9)年2月号~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,774 字 · 40 页
小春日和の睡さったらない。白い壁をめぐらした四角い部屋の中に机を持ちこんで、ボンヤリと肘をついている。もう二時間あまりもこうやっている。身体がジクジクと発酵してきそうだ。
白い天井には、黒い蠅が停っている。停っているがすこしも動かない。生きているのか、死んでいるのか、それとも木乃伊になっているのか。
それにしても、蠅が沢山いることよ。おお、みんなで七匹もいる。この冬の最中に、この清潔な部屋に、天井から七匹も蠅がぶら下っていてそれでよいのであろうか。
そう思った途端に、耳の傍でなんだか微かな声がした。ナニナニ。蠅が何かを咄して聴かせるって。
ではチョイト待ちたまえ。いま原稿用紙とペンを持ってくるから……。
オヤ。どうしたというのだろう。持って来た覚えもないのに、原稿用紙とペンが、目の前に載っているぞ。不思議なこともあればあるものだ。――
第一話 タンガニカの蠅
「あのウ、先生。――」
と背後で声がした。
クリシマ博士は、顕微鏡から静かに眼を離した。そのついでに、深い息をついて、椅子の中に腰を埋めたまま、背のびをした。
「あのウ、先生」
「む。――」