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はえ

蠅

海野 十三

「ぷろふいる」1934(昭和9)年2月号~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,774 字 · 40 页

青空文庫

「よオし、こいつが……」

私はたちまち躍りかかると、親蠅の咽喉を締めつけた。蠅は大きな眼玉をグルグルさせ、口吻からベトベトした粘液を垂らすと、遂にあえなくも、呼吸が絶えはてた。そしてゴロリと上向きになると、ビクビクと宙に藻掻いていた六本の脚が、パンタグラフのような恰好になったまま動かなくなってしまった。私はほっと溜息をついた。

そのときだった。私は頭をコツンとぶつけた。見ると私の頭は天井にぶつかったのであった。何しろグングン大きくなってゆくので、こんなことになってしまったのだ。私は元々坐っていたのであるが、蠅を殺すときに中腰になっていた。このままでいると、天井を突き破るおそれがあるので、私はハッとして頭を下げて、再びドカリと坐った。

「ああ、危かった」

だが、本当に危いのは、それから先であるということが直ぐ解った。私の身体はドンドン膨れてゆく。このままでは部屋の内に充満するに違いない。外へ出ようと思ったが、そのときに私は恐ろしいことを発見した。

「ああッ、これはいけない!」

私は思わず叫んだ。もうこんなに身体が大きくなっては、窓からも扉のある出入口からも外に出られなくなっているのだった。