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はえ

蠅

海野 十三

「ぷろふいる」1934(昭和9)年2月号~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,774 字 · 40 页

青空文庫

「よオし。すぐ行く」といって再び細菌科長の方を振りかえり、「今日はレコード破りだぞ。こんどが六十四人目だ」

「……」

二人は反対の方角に、急ぎ足で立ち去った。

入れかわりに、廊下をパタパタ草履を鳴らしながら、警視庁の大江山捜査課長と帆村探偵とが、肩を並べながら歩いて来た。

「……だから、こいつはどうしても犯罪だと思うのですよ、課長さん」

「そういう考えも、悪いとは云わない。しかし考えすぎとりゃせんかナ」

「それは先刻から何度も云っていますとおり、私の自信から来ているのです。なにしろ、病人の出た場所を順序だてて調べてごらんなさい。それが普通の伝染病か、そうでないかということが、すぐ解りますよ。普通の伝染病なら、あんな風に、一つ町内に出ると、あとはもう出ないということはありません」

「しかし伝染地区が拡がってゆくところは、伝染病の特性がよく出ていると思う」

「伝染病であることは勿論ですが、ただ普通じゃないというところが面白いのですよ」

二人の論争が、そこでハタと停った。彼の歩調も緩んだ。丁度二人が目的の部屋の前に来たからである。黒い漆をぬった札の表には、白墨で「病理室」