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ちぬられたかいとう
血ぬられた懐刀
国枝 史郎
「講談倶楽部」1928(昭和3)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,586 字 · 71 页
「目下伏見から幸蔵主殿が、太閤殿下のお旨を帯して、聚楽にご滞在なされて居られる。この際そのような振舞いをして、よろしいものでござろうかな?」
「いや大丈夫、大丈夫」
こう云いながら手を振ったのは、桃ノ井紋哉という若い武士であった。
「幸蔵主殿は私用とのことで、何も恐れるには及ばない。それに我君と幸蔵主殿とは、幼少の頃からのご懇親で、万事につけて聚楽のお為を、以前からお計らい下されて居られる。悪いようには覚し召すまい」
「いやいや一考する必要がある」
こう意議をはさんだ武士があった。加嶋欽作という若武士である。
「女ながらも幸蔵主殿は、太閤殿下の懐中刀で、智謀すぐれて居られるとのこと、なかなか油断は出来ますまい」
「それに」ともう一人が心配そうにした。山崎内膳という若武士である。
「ご宿老の木村常陸介様が、幸蔵主殿のおいで以来、気鬱のように陰気になられた。その常陸介殿はどうかというに、智謀逞邁、誠忠無双、容易に物に動じないお方だ。そのお方が陰気になられたのだ。幸蔵主殿の聚楽参第は、単なる私用とは思われない」
聚楽第の秘密
そもそも幸蔵主とは何者であろうか? 豊臣秀吉の大奥に仕えてそれの切り盛りをしているところの、いうところの老女であった。