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ちぬられたかいとう
血ぬられた懐刀
国枝 史郎
「講談倶楽部」1928(昭和3)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,586 字 · 71 页
太閤の寝首を掻いたなら! よしんば失敗をしたところで……」
云いすてると石川五右衛門は、木立を廻って立ち去った。
その足音が消えた時に、木村常陸介も立ち上ったが、思案にくれながら歩き出した。
「どうともして我君秀次公を、危険きわまる伏見の城へ、参第せぬようお諌めしなければならない」
行手に築山が聳えている。
裾を巡って先へ進む。
と、泉水が堪えられていた。
廻って主殿の方へ進んで行く。
「はてな」と呟いて佇んだのは、厳しい聚楽第の石垣の上から、武士姿の一つの人影が庭へ飛び下りたがためである。
「これは怪しい、何者であろう?」
常陸は首を傾げたが、
「伏見方の間者ではあるまいか?」
自分が五右衛門を刺客として、伏見城へやったおりからである。
伏見方の間者ではあるまいかと、ふと考えたのは当然といえよう。
「よしよし後をつけてやろう」
で、足音を盗むようにして、常陸介は後をつけた。
曲者は顔を包んでいる。どうやら年は若いらしい。心が急いてでもいると見えて、走るがように歩いて行く。主殿の方へ行くのである。
「ああこれは間者ではない。ましていわんや刺客などではない。歩き方や態度で自ずとわかる。