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ちぬられたかいとう
血ぬられた懐刀
国枝 史郎
「講談倶楽部」1928(昭和3)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,586 字 · 71 页
これは決して悪者ではない。とは云え聚楽第の武士ではない。おかしいなあ何者だろう」
心掛けの深い常陸介ではあったが、これ以上は知ることは出来なかった。
瞬間四人を討って取る
曲者は先へ進んで行く。常陸介はつけて行く。次第に主殿へ近づいて行く。
と、その主殿の方角から、四五人の武士が話しながら、あべこべにこっちへ歩いて来た。
「不破氏、不破氏、小四郎殿、そう憤慨をなさらないがよろしい。何も主命でござるからな」
一人の声が、なだめるように云った。
「さようさよう何も主命で」
相槌を打つ声が直ぐにした。
「それにさ、あれくらいの女なら、この世間にはいくらでもござる。あの女はあのまま差し上げなされ。そうしてその代わりにご愛妾の一人を、頂戴なさるがよろしかろう」
「その方がいい、その方がいい」
また相槌を打つ声がした。
「たかが廻国にやって来て、京へ止まった田舎娘でござる。そのような女に未練をもたれて、殿下のご機嫌を取り損なったら、これほどつまらないことはない。おあきらめなされ、おあきらめなされ」
「さようさようおあきらめなされ」
四人目の声も相槌を打つ。
が、そういう取りなしに答えて、怨みと憤りに充ちたような、狂気じみた声が聞こえてきた。