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ちぬられたかいとう
血ぬられた懐刀
国枝 史郎
「講談倶楽部」1928(昭和3)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,586 字 · 71 页
二人はしばらく無言であった。
と、聚楽第の一所から、人が斬られでもしたような、悲鳴が一声聞こえてきた。
不意に立ち上った幸蔵主は、スルスルと、欄干の側へ行った。で、悲鳴のした方を見た。
主殿と廻廊でつながれている奇形な建物の方角から、どうやら悲鳴は聞こえたらしい。
で、そっちへ眼をやったが、
「今夜はこれで三人斬られた。……それにしても奇形な建物は、何を入れて置く建物なのであろう?」
この部屋は?
奇形な建物の内部の一間で、老婆が喋舌りながら歩いている。
「最初は誰も彼もがんばりますよ。でもこの部屋へ押し入れられて、ものの五日と経たないうちに、大概は往生をしますよ。そうして今度は自分の方から、懇願をするようになりますよ。お側へ行かせて下さいましと。……だからお前様におかせられましても、もうもうそれこそ間違いなく、この部屋をお出し下さいまし、関白様のご寝所へ、お連れなすって下さいまし、男の肌、男の匂い、男の力、男の意志、それが欲しゅうござりますと、有仰ることでござりましょうよ。まあまあ出来るだけご随意に、強情をお張りなさりませ。強情が強ければ強いほど、要求も強くなりましょう。