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ちぬられたかいとう

血ぬられた懐刀

国枝 史郎

「講談倶楽部」1928(昭和3)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,586 字 · 71 页

青空文庫

単なる漁色的の動物であった。つつましい清浄なお紅という処女は、ほんの少し前に消えたのである。

しかし漁色の動物は、お紅一人ではないのであった。

あの近東の回教国の、密房に則って作ったところの、この奇形な建物の内には、同じような部屋が幾個かあって、その部屋々々には漁色狂の女が、無数に籠められて居るらしい。その証拠には四方八方から、極めて遠々しくはあったけれど、…………を柱へでも投げつけるらしい、物の音などが聞こえてきた。

みだらな唄声なども聞こえてくる。

だがお紅には聞こえなかった。

掻きむしられるような…………が、身心をメラメラと焼き立てる。その…………を消し止めようと、お紅は夢中で争っている。

しかし絶対に勝ち難かった。次第々々に負けて来た。とうとうお紅は打ちのめされた。

「妾は…………! 最初に来た人へ!」

桃色の薄衣を退けようとする。そうしてお紅は立ち上ろうとした。そうしてお紅は叫ぼうとした。

「お婆さんお婆さん出して下さい! そうでなかったら連れて来て下さい!」

で、お紅は泣き出した。

で、もし誰か異性の一人が、ここの寝部屋へ入り込んだならば、お紅は…………。