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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
「冨士」講談社 1939(昭和14)年9月~12月中絶、「血煙天明陣」桃源社 1970(昭和45)年に付載して完結公刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,970 字 · 176 页
「悪縁といえば、よくよくの悪縁でござるよの」と左門は、辛辣な声で云いつづけた。
「貴殿のお父上を討ち取ったばかりか、武蔵屋では、貴殿の恋人、博徒五郎蔵の女お浦という者を、拙者この帳中で。……しかるに、同じこの紙帳の中で、貴殿第二の恋人、栞殿を。……重なる怨みとはこの事! フッフッ、これでは貴殿、拙者を見遁がすことなりますまいよ!」
悲痛の頼母
「頼母様アーッ」
と栞は、左門の手から遁がれよう遁がれようと身悶えしながら、必死となって叫んだ。
「左門様が、あなた様のお父様の敵などとは夢にも知らず、先刻から、紙帳の中で、物語りいたしましたは真実ではござりまするが、何んの貞操を!」
「それは真実じゃ!」
と、左門は、意外に真面目の声で云った。
「栞殿は、純潔じゃ。……それから……」と云ったが、云い止めた。
しかし、やがて決心したように、誠実のこもった声で、
「先夜、武蔵屋で、お浦と申す女子を手に入れたよう申したが、これも嘘じゃ! ……拙者に関する限り、お浦という女は純潔じゃ! ……本来、拙者は女嫌いでな。いわば女性嫌忌性なのじゃ!」
(それにしても)
と、左門は、自分で自分を疑った。