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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
「冨士」講談社 1939(昭和14)年9月~12月中絶、「血煙天明陣」桃源社 1970(昭和45)年に付載して完結公刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,970 字 · 176 页
――そういうお浦が、怨みと怒りで血走った眼を据え、食い入るように、下から、左門を睨み、地を這い、じりじりと進み、武者振りつこうとしているのであった。
純情の二人の女
左門は、右手に、抜いた関ノ孫六の刀を握り、それを、お浦へ差し付け、左手では、紙帳の裾をかかげ遁がれ出ようとする栞の帯を掴んでいた。
「お浦、事情を聞けばまことに気の毒、さぞ左門が憎いであろうぞ! が、今は甲斐ない繰り言! 過ぎ去った事じゃ! ……」
と云ったが、抜き身を地へ置くと、その手を頤の下へ支い、眉根へ寄せたがために、藪睨みのようになって見える瞳で、つくづくとお浦の顔を見詰め、
「以前の拙者なりゃ、その方より紙帳へ近附いたからには憂き目を見たは自業自得と、突っ放すなれど、現在の拙者の心境ではそれは出来ぬ。気の毒に思うぞ! 詫び申すぞ! ……さりながら一切は過ぎ去ったこと、繰り返しても甲斐はない! ……今後は贖罪あるばかりじゃ! ……お浦、そちのその重傷では、生命取り止むること覚束ないかもしれぬ。そこで云う、今生唯一の希望を申せ! ……左門、身に代えて叶えてとらせる!」
「希望※(感嘆符疑問符、1-8-78) ……唯一の、今生の希望※(感嘆符疑問符、1-8-78)」