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ちまんだらしちょうぶし

血曼陀羅紙帳武士

国枝 史郎

「冨士」講談社 1939(昭和14)年9月~12月中絶、「血煙天明陣」桃源社 1970(昭和45)年に付載して完結公刊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,970 字 · 176 页

青空文庫

と呼ばわり、もう一人の乾児が、味方が討たれたのに怯え、立ち縮んでいる所へ、真一文字に寄り、肩を胸まで斬り下げ、

「頼母氏、今の斬こそは、我が流における『青眼破り』でござるぞ! 相手、青眼に付けて、動かざる時、我より進んで相手の構えの中へ入り、斬るをもってこの名ござる!」

と大音に呼ばわった。

左門の侠骨

いまだに立ち木に背をもたせ、五郎蔵の乾児たちと立ち向かっていた頼母は、眼に左門の働きを見、耳に左門の声を聞き、茫然とした気持ちにならざるを得なかった。それは悲喜交の感情ともいえれば夢に夢見る心持ちとも云えた。左門が自分の味方として現われ出て来たことは、何んといっても頼母にとっては有難い嬉しいことであった。しかし討たねばならぬ父の敵から助けられるということは、苦痛であった。とはいえ現在の場合においては、その苦痛は忍ばなければならなかった。もし五郎蔵一味に自分が殺されたならば、左門を討つことが出来なくなってしまうからである。今は、何を措いても、五郎蔵一味を殲滅するか追い払うかしなければならなかった。それには左門からの助太刀は絶対に必要のことであった。