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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
「冨士」講談社 1939(昭和14)年9月~12月中絶、「血煙天明陣」桃源社 1970(昭和45)年に付載して完結公刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,970 字 · 176 页
左門はやにわに小柄を抜き、投げた。小柄は、紙帳の上を、飛び魚のように閃めき飛んだ。
頼母は、背後で悲鳴が起こったので、振り返って見た。竹槍を持った男が、咽喉へ小柄を立て、地面をのたうっている。事情が悟れた。
「左門氏、あぶないところを……お礼申す!」
「貴殿と拙者とは讐敵同士……」
と左門は、逃げおくれた一人を、背後ざまに斬り仆し、
「恩に着るな、恩にも着せぬと申した筈じゃ!」
「…………」
この時まで五郎蔵は、乾児たちと離れて立ち、乾児たちの働きを見ていたが、左門と頼母とに、乾児たちが見る間に、次々に斬ってとられるので、怒りと恐怖と屈辱とで躍り上がり、頼母眼掛け駈け寄ろうとしたとたん、
「オ、親分ーン」
という声が、林の中から聞こえて来、一人の乾児が木の間をくぐって走って来た。
「テ、典膳めは、道了塚の方へーッ」
「おおそうかーッ」
と、五郎蔵は応じたが、
「典膳だけは、俺の手で! ……そうでないと、安心が! ……」
道了塚の方へ走り出した。
謎解かれる道了塚
この頃典膳は、道了塚まで辿りついていた。彼の肉体も精神も弱り果て、息絶え絶えであった。彼は塚の裾の岩へ縋り付いて呼吸を調えた。