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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
「冨士」講談社 1939(昭和14)年9月~12月中絶、「血煙天明陣」桃源社 1970(昭和45)年に付載して完結公刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,970 字 · 176 页
父、忠右衛門が、横死をとげ、自分が復讐の旅へ出るようになったのも、元はといえば、天国の剣の有無の議論からであった。頼母は、天国の名を聞くごとに、ヒヤリとするのであった。
(紙帳から出て来て、俺に体あたりをくれた武士も、天国のことを云ったが、薪左衛門殿も、天国のことを……)
頼母は、薪左衛門を見た。薪左衛門は眠っていた。眠ったままの言葉だったのである。
五郎蔵の賭場
こういうことがあってから、三日経った。
ここ、府中の宿は、火祭りで賑わっていた。家々では篝火を焚き、夜になると、その火で松明を燃やし、諏訪神社の境内を巡った。それで火祭りというのであるが、諏訪神社は、宿から十数町離れた丘つづきの森の中にあり、その森の背後の野原には、板囲いの賭場が、いくらともなく、出来ていて、大きな勝負が争われていた。
伊東頼母が、この一劃へ現われたのは、夕七ツ――午後四時頃であった。歩いて行く両側は賭場ばかりで、場内からは景気のよい人声などが聞こえて来た。夕陽を赤く顔へ受けて、賭場へはいって行く者、賭場から出て来る者、いずれも昂奮しているのは、勝負を争う人達だからであろう。