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こういのかち

行為の価値

宮本 百合子

「青年ノ旗」1946(昭和21)年8月30日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,375 字 · 5 页

青空文庫

親類でも、いやな奴はいやな奴として表現する。それが漱石であった。

漱石が死去して、門人たちは出来るだけこの文学者の趣向に合った墓をこしらえてあげたく思った。ところが、アドヴァンテージが墓をつくった。石づくりの、でっちりとした重苦しい墓で、それは漱石の心に反した。心ある人々は、死んで、抗議の云えない人の墓を、生前好かれていなかったと知っている者が、今こそと自分の生得の力をふるってこしらえた心根をいやしんだ。そして、漱石を気の毒に思った。その墓は、まるで、どうだ、何か云えるなら云ってみろ、と立っているようである。

日本の治安維持法は十七年間に十万人の犠牲を出して、一九四五年の秋、その血なまぐさい歴史を表面上まきおさめた。

この悪法が撤廃され、獄中の人々が解放された時、日本は一種の昂奮した状態におかれた。悪法犠牲者が、そのとき英雄と見られた。まして、もう少しで自由になれるとき、獄死した共産主義者たちに対して、尽しきれない遺憾が表明された。それは、自然で、真実の心であった。

入獄していた三木清氏が、解放の日を待たず死去された。戸坂潤氏も、死去された。三木清という哲学者は、西田幾多郎の哲学の解説者であり、戦争中は南方に出かけたりしていた。