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こういのかち

行為の価値

宮本 百合子

「青年ノ旗」1946(昭和21)年8月30日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,375 字 · 5 页

青空文庫

最も進歩的な階級の哲学である唯物弁証法の哲学に対して、日本で一時大流行をした西田哲学というものは一種の観念的哲学であり、自然と社会に対する進歩的な認識を助けるというよりも、それを混乱させる役割をもった。それが、西田哲学の歴史における性格である。

三木清氏に、一人の娘さんがある。やっと女学校ぐらいの年頃で、父親の入獄中、疎開先の埼玉県の農家に一人で留守していた。夫人は早く死去されたとかきいた。さし入れ、その他の世話は、娘さんの稚い心くばりを、東京市内の某書店につとめていた或る人が扶けて、行っているという話をきいた。三木氏の義理の兄弟で帝大農学部教授がある。どうして、その人が、小さい娘一人をかばって世話をひきうけられないのだろう。おどろいて、不思議に思った。「やっぱり、こんな時勢だからでしょうね」と話した人は語った。

一九四五年十月という、日本にとって歴史的な月がすぎて、記念に、三木清賞の会が組織された。そしたら、その発起人の第一に、義理の兄弟である教授が名前を出していた。

云うに云えないこころもちでそれを眺めたのは、私一人だけだったろうか。こういう名流人たちの保身上の「都合」