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まちのこうふく
街の幸福
小川 未明
「童話文学」1929(昭和4)年7月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,723 字 · 6 页
おそらく、めいめいの明るい家庭へ、幸福なすみかへ帰ったのでありましょう。
少年は、さびしそうに、あたりを見まわしました。あちらの電車の停留場の方も、一時のように、人の黒い影もなければ、ただ、レールが、光ってみえるだけです。空には、いままでより、もっとたくさん星が見えていました。
「これから、私たちが、楽しく遊んで、人間をうらやましがらせてやるのだ。」と、星たちが、話しているように思われたのです。
父親は、手を休めて、バイオリンを抱えてだまっていました。このとき、少年は、いっそう、悲しかった。そして、ふと思い出したように、向こう側のたばこ屋を見ました。すると、やさしい美しい娘さんが、店にすわっていました。
……空の曇った、いまにも降り出しそうな晩のことであります。二人は、さびしそうに、銀行の前に立っていました。
「お父さん、どうしましょう。」と、少年は、うらめしそうに、さびしい往来の上をながめながらいいました。
「そうだな、今夜は、あきらめて帰るとしよう。どれ、もう一つ、気の毒だが、唄をうたってくれ。」と、父親は、答えて、バイオリンを鳴らしはじめた。
少年は、いつものように、精いっぱいの声を出してうたったのです。