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まちのこうふく

街の幸福

小川 未明

「童話文学」1929(昭和4)年7月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,723 字 · 6 页

青空文庫

わけて、少年には、遠く見える、美しい娘の姿が、この人生を明るくしたのに不思議はありません。

ある夜のこと、思いがけなく、新聞社の人がきて、二人の立っているところを写し、記者は、少年に、いろいろのことをたずねて去りました。そして、翌日のその新聞には、大きな見出しで、孝行の少年の記事が、写真とともに載せられていました。

少年には、そのことがなんとなく、面はずかしいことのような気がしました。しかし、このことがあってから、夜になると、人々は黒く二人を取り巻きました。そして、二人は、銭をもらい、いままでのごとく、困ったことはなかったけれど、少年にとってただ一つ、物足らないものがありました。それは、それ以来、娘さんが二度とやってきてくれなかったことです。

*   *   *   *   *

父親の死後、少年は、労働者となって、工場に働きました。運命は、いろいろに、もてあそんだ。彼は、機械に触れて、不具者になりました。そして、二十余年の間に、いろいろのことがあったが、ついに、ふたたび、バイオリンを抱いて自ら歌い、街頭に立たなければならぬ身の上となったときに、昔の場所を選ばずにはいられませんでした。