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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
手も足も動かなくなる。放置すれば、倒れる一瞬である。天水桶をみつけて、すがりつく。頭から、かぶっているのだ。又、歩きだす。知覚がもどり、彼は走りだしている。苦痛を超える、よろこび。坂がある。果して、駈けあがる力があるだろうか。疑いに負けてはならない。あらゆる苦痛をのりこして、走りつづけなければ勝つことができないのである。
一番健康な人のマラソンと、病人と、よく似ている、と放二は思った。マラソン選手は高熱のウワゴトの状態で走りつづけるのだ。苦痛に耐えて、生きぬき、走りつづけているのは病人だけではないのだ。人生が、そういうものなのである。凡人は途中でおりたり、落伍してしもう。まだしも病弱な自分は、その宿命として、おりては負けることをさとっている。そして、選ばれた優勝選手の心境を理解することもできるし、ややそれに似た日々を体験もしている。
少年の日、放二は病床で、そんなことを考えたことがあった。
二
この夏の暑気いらい、急速に衰えはじめた放二は、養父母の慈愛の手にみとられていたころとちがって、仕事もあったが、休息すべき部屋がなかった。
早めに戻って休息するのが何よりだったが、寝ていると、彼の部屋をたよりにしている女たちに暗い気持を植えてしもう。