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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

似た機会が起るにしても、二つの夜は、その時に限って継続しているにすぎないのだ。せつ子のように多事多端な毎日をすごす人でも、当人の身には事もない一生であるかも知れない。

「すると、君自身の特に最近の実感だね。事もなく、又、多忙をきわめているらしいな」

「多忙を自覚する人と、自覚しない人に分類して、ぼくはやや自覚派に属していますよ」

「君がかねえ。そんなにとぼけてねえ」

「とぼけているのは顔だけですな」

「青木君と記代子の二人はどうですか。自覚派かも知れないな」

穂積はちょッとうつむいて考えこんでいたが、ちょいととがめだてるように、

「ひどいねえ」

「なにが?」

「記代子さんは、先生の姪ですよ。まるで赤の他人の話のように」

「へえ。そうかい。ほくが君に訊きたかったのが、それなんだぜ。当人が姪の身の上を他人同様きき流すのは当人の自由なんだぜ。ところが、それをぼくに語ってきかせる君の場合は、世間なみの礼義みたいな気兼ねがありそうなものじゃないか。御愁傷様というような、ね。ぼくの目からは、君の方がトーチカのように見えるんだがね」

「ハッハア」

穂積は明るく笑って、

「だから、人のことで気をつかっちゃいられないんです。