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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

でも、そんな気持も、あるのよ」

「社長だものな」

「そうなのよ。社長でなければ、乞食になるのよ。そして、生きてるわ。今日は乞食の方の気持よ。微風の訪れでもなかったの」

せつ子は胃が悪いから、酒をのむといけないのだと云いながら、かなり飲んだ。そしてテキメンに苦しみはじめた。長平が知人の医者へつれこむと、医者は顔をくもらせて、酒をのむと、ひどいことになるかも知れない、とせつ子を叱責するようにつぶやいた。

せつ子は黙って、医者を見つめていた。顔色を微動もさせずに。そして、自動車をよんで大阪へ戻った。

五

長平は上京した。

その日の夜中に長平の住む茶室の戸をたたいたのは青木であった。

「そろそろ隠れ家を変えなきゃいけないぜ。ここは拙者につきとめられているんだから、アイビキなぞには不都合だし、第一、タカリが怖しいやね」

青木は遠慮なく上りこんで、

「とんだ合邦さね。やってきたのは娘じゃなくて、ジジイなんだとさ。ヤ、コンバンハ」

いくらか酔っているようであった。どっかとアグラをかいて、

「いずれ呼びだしをうけて、お叱りを蒙るんだろうから、手間を省きにきたのさ。