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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

「ええ、時刻にも態度やその他にも、いつもと違うところはちッともなかったようですよ。朝は忙しいので、特におかまいもしませんでしたけど、御食事中の御様子やなどでも、ね」

「特に親しくしてらした女友だちは?」

「そう。たまにね。遊びにいらした方もあるし、お噂をうかがうこともありましたが……」

主婦が思いだした名は、放二の手帳に控えたものをでなかった。

「別に、それまで、変った様子はなかったのでしょうね」

「いえ。毎日変った様子でしたよ」

主婦は大ゲサに身ぶりした。

「つまりね。金曜の朝はいつもと変りがなかったのですよ。ですけど、そのいつもがね、決して普通じゃないんですよ」

放二が世間知らずに見えるので、主婦はコクメイな話し方をした。そして、言ってよいのか、どうか、と迷う様子であったが、

「もちろん、皆さん御承知でしょうが、ニンシンなさっていましたからね。いろいろと、そうでしょうね。思い悩んでいらしたんでしょうよ。とにかく、普通じゃなかったですよ」

「どんな風に、でしょうか」

「話の途中に知らんぷりして立っちゃったり、自分で話しかけといてプイと行っちゃったり、そうかと思うと、こっちで話しかけないのに、なアにイなんてね。