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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

宿泊料は」

「半額にまけとくわ。千円」

長平はポケットからむきだしの札束をつかみだして、二千円やった。

「さすがに先生はお金持ね。あの子たちにも、いくらか、あげてよ」

長平はもう二千円やった。

ルミ子はそれをつかんで部屋を去ったが、まもなく二人の女が一しょにきて礼を言った。

「おかげで明日は支那ソバたべて、映画が見られるわ」

カズ子が言った。年のせいもあるが、この子は世帯じみていた。そして、

「お部屋があると、もっと稼げるんだけど。アア、自分の部屋がほしい」

と云って立ち去った。

二人の友達が去ると、ルミ子はようやく自分の時間がもどってきたように、くつろいで、

「自分の部屋が、アア欲しい、なんて、インチキ云うわね、カズちゃん」

「どうして?」

「その気になれば持てるにきまってるわ、お部屋ぐらいはね。その気持がないのよ」

「宿なしの方が気楽というわけだな」

「兄さんにもたれて、あまえてるのよ」

「北川にかい」

「ええ。今夜は二人しかいなかったけど、ほんとは五人いるの。アブレると、五人泊りこんじゃうわよ」

「なるほど。貧乏するわけだな、五人も面倒みてやるんじゃ」

「そうよ。ほんとはね、カズちゃんたち、時々アブレたって、兄さんの給料の倍ぐらい、稼いでるわね。