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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

その人も、出てくるわよ」

三人は放二のからだに手をかけて、つれこもうとした。放二はふと気がついて、

「その方は、ダンスホールにいらしたときは、キッピイさんと仰有ったそうですけど」

それをきくと、三人は目を見合わせた。放二のからだにかけた手も、自然に力がゆるんだ。

「じゃア、よんできてあげるわ」

一人が、こういって店へはいると、他の二人も放二から離れて、戸口の陰へ身をひいた。

背の高い娘がズカズカと出てきた。気色ばんでいたが、放二の顔をみると、意外な面持であった。

「誰よ。あんたは?」

放二は名刺をさしだした。

「大庭記代子さんと同じ社のものですが、社で、大庭さんに急用ができたのです。あいにく、大庭さんは休暇中で、家にも居られず、居どころが知れないのです。明日の朝までに、捜しださないと、困ることがあるんですけど、こちらへ立ち寄られなかったかと思いまして」

キッピイは、さえぎって、

「ここ、どうして分ったのよ」

「樋口克子さんにおききしたのです。大庭さんのお友だちのみなさんに訊いてまわっているのです。どこにも立ち寄っておられません。ここでおききしてごらんなさい、という樋口さんのお話でした」