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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
命令らしいことを言ったのは、それだけだった。真剣のようで、なげやりであった。来たばッかりの女に、何を言ったって仕様がない。気にいらなきゃア、その日のうちによその店へ行っちまうのがこの商売の女だから、身を入れて話をするのは居ついてからの相談だというような悟りきった様子である。悟り方が諦め的で、なんとなく哀れに見えた。
ほかに男はいなかった。
お客は幾組もきやしない。お客のもとめに応じて、二階の小部屋で遊ぶことができるようになっていた。なんだ、そんなのか、とルミ子は思ったが、表向きがそうでないだけバカバカしくて、奥へ消えたカップルが妙な顔付で再び現れてくると、笑いたくなるのであった。
ルミ子はお客にさそわれたが、
「はじめてだから、ダメ」
「はじめてだって、ここはそういうウチじゃないか。はずかしがることはないぜ」
「あんたに会うのが、はじめてだから、ダメなのさ」
再び戻ってくるという仕掛が妙であった。女の中でも利のきいた子は、ここで遊ぶことには応じなかった。
ルミ子の様子がまだ子供っぽくて可愛いのに、おめずおくせず悠々としているから、女たちは興味をもつものも、好意を示すものもいた。