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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
ているのじゃないかと放二は思った。常の世の成金の思いあがりとは違う。戦争という魔物のはたらいた詐術であり、時間の感覚の奇怪な喪失なのである。
記代子も、たった十日間で、エンゼル家の主婦になりきっているようだ。
それを自分自身に当てはめると、どうなるのだろう? たった十日のうちに、記代子もせつ子も、一年も二年も時間をかけたような変化を示しているが、彼はそれを見ているだけのことだ。
それが自分の役割なのだ、と放二は思った。変るといえば、やがて死ぬだけのことだろう。そして、変る人も、変らざる人も、すべてが彼には、いとしく見えた。
二
長平はエンゼルに興を覚えた。乱世というものは何が現れるか分らない。貯蓄精神と礼節に富む愚連隊の出現も乱世なればこそ。出現してみれば、ありそうなことで、怪しむに足らない。
堅気の庶民が乱世の荒波にもみまくられて、体裁ととのわず、投機的になり、その日ぐらしのヤケな気持になっているとき、裏街道で悪銭のもうかる愚連隊の中のちょッと頭のきく連中が、悪銭身につかずという古来のモラルをくつがえして、せッせと貯金し、家屋敷をかまえ、身に礼服をまとい、ヤブレカブレの堅気連中に道義も仁義もないのを嘆いているかも知れないのである。