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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

先方にはピストルのようなものがあって、ただ軽率に血を見ることを好まなかったのかも知れない。あのヤサ男の静かな落付きは尋常ではない。エンゼルはそれを軽視することができなかった。世間知らずの記代子などには、あのヤサ男の正体が分るはずはないのである。

そう気がついてみると、ルミ子という女も、さすがに、ただのパンパンとはちがう。邪教の一味は、小娘のパンスケまで、ミコだか狐つきだか分らないが、老成ぶって、得体が知れないのである。

「お前は、いくつだ」

「十九」

「フ。どうだい。オレが北川を殺したら、どうする? お前、オレの女になるか」

エンゼルはビールをなめて、面白くもなさそうに、せせら笑った。

ルミ子の顔色は変らなかった。

「なぜ殺すのさ」

「なに、下駄につかえた石ころをはじくようなものだアな。誰かが、ちょッと、どこかの街角で、あの兄さんを眠らしてくれらア」

「全然、タダのチンピラだ」

ルミ子はガッカリして、ねころんで、片肱を枕にエンゼルを見つめて、つぶやいた。

「屋敷もちの花つくりのアンチャンも案外だなア。よくお金モウケができたわね」

八

「誰か殺せば、女がウンと云うとでも思っているの?」