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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

「好き好きさ。それだけ自分の好きなものが分っていれば結構さ。好きなようにやるのが道楽だろう。で、君の御用件は、なんですか」

この男が何の用できたのだろうと思うと、なんとなく早く知りたくて仕方がなかった。

エンゼルは困ったという笑いを見せて、

「どうも、そちらから、きりだして下さると思っていましたが、御催促とは、どうも、ちょッと、勝手ちがいで……」

二

エンゼルはゆっくり身構えを立てなおした。彼は大人を買いかぶってもいなかったし、世間的に知名な大人を特別な大人だとも思っていなかった。中隊長だの部隊長だのというものが、その階級によって与えられていた威厳を取り去れば、ダラシのないウスノロにすぎないじゃないか。世間というものが個人に与える特別の威厳というものを、眼中に入れるな、ということを、戦地の経験によって身につけていたのである。対等以上の存在を考える必要はないのである。

「女の心理というものは、妙なものですな。女というものはツマラヌ人間である、ぼくがこう判断したのがマチガイかどうか、ひとつ聴いていただきたいものですよ。しかし、ぼくも、オッチョコチョイには相違ありません。