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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

あんなに変に悲しい童話、助からないんです」

三

「お父さんやお母さんは、いるのかい?」

「ええ。それでパンパンは、おかしい?」

ルミ子は笑った。いつもながら、あどけない笑顔である。そのせいで、ルミ子の部屋はいつも、明るい。長平は疲れた手を休めて、ルミ子と話を交すのがたのしかった。

「生れた家へ帰りたいと思わないかね」

「思いだすことはあるけど、帰りたいとは思わないわね」

「病気になったり、苦しいことがあってもか?」

「ええ。生れた家は、もう無いことにきめたの。私はね。街の女。街の子よ。今日があるだけよ。昨日も、明日もないわ。今のことしか考えない」

「ホウ。立派な覚悟だ」

「先生は?」

「そう見事には、いかないな。昨日のことも、明日のことも、考えるよ」

「私も、そうよ。でも、それじゃアこまるのよ。パンパンには、ね。昨日も、明日も、あると、こまる」

「なるほど」

「私だって、パンパンでなければ、昨日も明日もある方が都合がいいだろうと思うわ。その方が、自然だものね」

「そうかねえ。今のほかに、昨日も、明日もある方が、自然というものかねえ」

「冷やかしちゃア、ダメだわ。