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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

「殺せ! はやく、殺せ!」

とり押えられたヤエ子は足をバタバタさせて叫んでいる。

「なにが、殺せ、さ。ルミちゃんを殺しかねないのは、あんたじゃないか」

「ヘッ。それが、どうした。お前だって、ルミ子が死んじまえばいいと思ってやがるくせに。アタイはアイツが憎いんだ。自分だけ、部屋をもって、羞しくないのかよ! アタイたちが宿なしで、うれしいだろう! 畜生!」

ルミ子の顔色が変った。

「ここを、どこだと思うのよ」

「チェッ! なんだと。どこだって、かまうかい。お前が、ここの、何なのさ」

ルミ子は語るにも叫ぶにも窮して、涙があふれた。ヤエ子はそれを憎々しげに見すくめた。

「フン。結構な御身分さ。自分だけがこの部屋のヤッカイ者じゃないと思ってやがる。オレたちは貧乏だよ。金がないんだよう。金がありゃ、誰だって、思うことができるんだ」

十一

「思うことができるなら、静かにしたら、どうなのね」

と、一人がたまりかねて、たしなめたが、

「よせやい。アタイ一人が悪いのかい。わるかったネ。お前たち、お金あるのかい。ヘソクリがあるなら、正直に言いなよ。アタイだけが、一文なしの、宿なしだと笑いたいのかよ。