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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
記代子などは例外だった。
「カンシャクを起したくもなるだろうさ」
青木は深い愛情をもって記代子を見ていた。それは同族に対するあわれみの念でもある。記代子のようなアワレな娘には、踏んだり蹴ったりされても、トコトンまでイタワリを果すユトリを彼は身につけていたのである。
「さ。では、旅館へ御案内いたしましょう」
「あなたが泊るのではありません。案内したら、帰っていただきます」
「御意のままですよ」
「昔のことは、もう、すんだことだわ。親しい名前や言葉で話しかけるんだって、失礼だわ」
「わかりました」
「私の旅館、知ってるのは、あなただけよ。ですから、あなたにしていただく用があるから、明日の朝、来て下さるのよ」
「承知しました」
五
翌朝、青木は早めに出勤の支度をして、旅館の記代子を訪問した。
早く目をさましたものとみえ、朝食もすませ、服装も化粧もキチンとして、所在なさそうにしている。
「よく眠れましたかね」
記代子は目をけわしく光らせて、
「私を探してきた人はなかった?」
「まだ、きません。で、御用というのは、何でしょうね」
複雑なかげりが記代子の顔を走った。まだ思案がついていないのではないか、と青木は思った。