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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

そのつもりで葬儀の支度をしといてもらいたいね。ナニ、葬儀たって、誰に来てもらう必要もないが、形だけのことをしてやりたいのさ」

「ハイ。ハイ。かしこまりました。ぼくも多少は縁につながる意味があるから、因果とあきらめて、やりますよ。どうだい。親類一同に焼香をねがったら。親類一同の住所姓名がわがらないから、新聞広告はいかがですか。親類代表、大庭長平。ルミ子儀かねて博愛の精神をもって、男子一切同胞の悲願をたて、よくその重責の一端を果し候も、身に限りあり……」

長平は上京した。東京と京都は遠いようだが、青木と穂積が警察でゴテついている時間の方が、東海道の距離に負けない長さであった。まだ棺桶の用意もできてやしない。二人は屍体と差しむかいで、ヤケ酒をのみながら、ションボリお通夜をしていた。

「ヤ。おいでなすッたな。大公殿下。二人の哀れな葬儀人夫の悲しき様を、とくと見てくれよ。ついでに、自殺した妃殿下の太平楽な寝姿も見てやってくれ。オレたちが足すりへらして三拝九拝、ヘドモドしながら諸方を駈け歩いているのに、妃殿下は寝たッきり身うごきもしねえや。ありがとうとも言わないけど、太平楽がすぎると思うがね」