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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

奥さんだって、帰りの電車賃しかないんだからね。ぼくの方じゃ、車代も長平さんからタカルつもりだったんだが、身代りだから、北川さん、覚悟してくれよ」

「大庭さんはお見えにならないんですか」

「あんたほどの麗人の口説も空しく終りけりというわけさ」

青木の意志ではなかったのに、目に憎しみがこもる。心の窓はかくしきれない。それをまぎらして笑ってみても、悲しさがしみのこるばかりである。

「なア、北川さん。人間は一手狂うと妙なことをやるものさ。この奥さんが大庭君を思いつめて離婚すると云いだす。折しもぼくは八方金づまりで大庭君に救援をもとめようという時さ。二つは別個の行きがかりだが、これが重なると変な話さ。ぼくも考えて、変だと思いましたよ。まるで女房売るから金よこせみたいじゃないか。けれども、そう思いつくと、妙なものさ。変なグアイだから、やりぬけ、やりぬけ、とね。なんとなく悪党らしい血もたかぶるし、負けじ魂もたかぶるしね。いつのまにやら、女房の代金をとる計算にきめているのだ。今だって、そうだぜ。女房はごらんの通りふられてくるし、大庭君は買わないつもりらしいが、ぼくは今でも売りつけるハラさ。