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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

夜はバーテンもやりますよ。そのために、是が非でも金がいる」

礼子は放二に向って、

「梶さんから、それらしい話おききですか」

「ぼく三週間ほどお目にかかっていませんので、何もおききしておりません」

放二は青木の存在すら初耳だから、まったく知らなかった。

「ですが、あすお会いする約束ですので、そのお話をうけたまわるかも知れません」

「え? 君が、あす、梶さんに会うって?」

青木はおどろいて、顔色を改めて、

「君は、どうして、あの人と……」

「北川さんと梶さんは、親同志親戚以上に親しくしていらした方」

礼子の言葉は信じられないという青木の顔色であった。

「君、いつ、その約束したの」

詰問はするどい。放二の静かな態度はいさゝかも乱れなかった。

「速達をいただいたのです」

「いつ?」

「昨日の午前中でした」

「発信は、どこ?」

「そこまで調べませんでした」

「その速達、見せてくれない?」

「いま持っておりません」

放二は静かに答えたが、実は胸のポケットに在るのである。

青木は解せないらしく、思い沈んでいたが、

「社用で大阪へ行ってるはずだ。五日前にたったんだが、まだ二三日は戻らぬ予定ときいていたが」