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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

こう考えて選んだのである。

せっかくの胸算用は大当外れ、大失敗に終ってしまった。

小田原で二等車にのりこむ。ヨウ、と立ち上った男が酔顔を真ッ赤にそめて近づいて、

「おせッちゃん。箱根に雲隠れの巻か。ヤ、これは失礼」

ペコンと宇賀神に挨拶して、ひッこんだ。せつ子の雑誌の編集次長の河内であった。宇賀神のもとへ一しょに訪問記事をとりにでかけた男で、ソモソモのナレソメを一挙に見ぬく唯一の人物だから始末がわるい。悪い車に乗りあわしたと後姿を目で追うと、ヤ、居る、居る。

女流作家の呉竹しのぶ。このお喋りにかかっては、一夜のうちにジャーナリズムへ筒抜けとなろう。も一人は放二の雑誌の編集長の穂積であった。悪いのばかりが乗り合わせていた。

二

「え? そうか。あんときの、あんたの同僚かア。覚えてる」

宇賀神は河内を思い出して、膝をうって、

「退屈しのぎに、いいなあ。よんでこいよ」

「ダメ。ジャーナリストはうるさいから。すぐ評判がたってしまうわ」

「オ。やってる。オバアチャンも飲んでるわ。オ。キュッと一息にやりおったなア。ワア、酔っ払ってる。面白れえな。あのオバアチャンは、どなたかいな」