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がいとう
街頭
岡本 かの子
(巴里のある夕)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,075 字 · 3 页
二列に並んで百貨店ギャラレ・ラファイエットのある町の一席を群集は取巻いた。中には雨傘の用意までして来た郊外の人もある。人形が人間らしく動く飾物を見ようとするのだ。
百貨店の大きな出庇の亀甲形の裏から金色の光線が頸の骨を叩き付けるほど浴せかける。右から左から赤や水色の紫外光線が足元を掬う。ここでは物は曖昧でいる事は許されない。明るみへ出て影をぎとられるか闇に骨まで呑み込まれてしまうかだ。
行列の前の方で鬘で年を隠したマダムが逃げた若い情夫と思わずめぐり合った。金棕櫚織の襟飾に手がかかる。
――まあ、この薄情が! ちょっとお出で。
鋪石へ連れ出す。
気の利いたタキシーがすぐ側へ乗りつけて来て無言で扉をあける。後れ走せに馳けつけた巴里の巡査が二人を軽く押し込んで扉を締める。
――行先きは二人でよく相談しなさい。
そしてわざと丁寧な挙手をした。
二人の抜けたあとの行列の空所は直ぐうずまった。
基督降誕祭にはあと四五日の土曜の夜だ。高いオペラの空気窓から「タイスの」唄が炭酸瓦斯にまみれて浮き出ている。遅々たる行列の進みが百貨店の外の入口まで届くと黒服の店員に管理されて人数の一くぎりずつが内側の入口の床石に誘われる。