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まち
街
宮本 百合子
「女性」1927(昭和2)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,689 字 · 37 页
もうちっと大きかったらとんだ苦労だ」
「ふふふ、まさか!――珍しいんだわねえ、うめ坊」
うめは、祖母の横に坐り、上眼づかいで伯母を見上げながら、にっとはにかみ笑いをした。おかっぱで、元禄の被布を着て、うめは器量の悪い娘ではなかったが、誰からも本当に可愛がられることのない娘であった。蒼白い顔色や、変にませた言葉づかいが、育たないうちにしなびた大人のような印象を与えた。年寄りの祖母に、遊び仲間もなく育てられているうちに、うめは、六つで、もう年寄りになりかけているのであった。志津は、甘えて横座りしているうめを愛情と焦立たしさの混った眼で眺めながら、
「うめちゃん、何て名? お二階の異人さん」
と訊いた。
「ジェリさん」
「――本当? お菓子みたいな名なんだねえ」
「違うんだよ、ジェル何とか云うんだそうだけえど、あんな長い名覚えられるもんじゃあない、名なんぞ呼ぶ用がありゃしないよ」
「――二階に人がいると、でも淋しくなくっていいわ。そろそろ下駄片づけちゃどう」
せきは、薄い苦笑いを洩らした。いつか志津が遊びに来た時、
「まあ、どうしたのあの上り口の下駄ったら、何人家内です、こちらさん」